近年の市場では、採用単価が高くなり、一人の退職が会社に与えるダメージは以前よりも大きくなりました。
それにより、人材の離職防止に予算をかける企業が増えています。
しかし、離職というのはそのケースごとに解決する手段が異なるので、闇雲に策を講じても効果的ではありません。
人材を定着させるためには、原因ごとに離職を分析してから防止策を考える必要があります。
この記事では、ケース別の離職防止策と、離職防止に欠かせないものについて解説致します。
「離職率が高い」は何%以上?
なるべく下げたい離職率ですが、どの程度なら許容範囲と言えるのでしょうか?
どんな会社でも離職はつきものですので、5年目、10年目、15年目とどの層をとって平均しても10%~20%程度であれば、特に問題視する必要はないでしょう。
また、離職率0%を目指す必要はありません。
離職率0%の状態では、極端に会社をやめにくい環境があったり、好待遇過ぎている可能性もあり、逆に怪しくなります。
一方で、離職率が50%を超えるとなれば、問題があると言えます。
【ケース別】離職の原因と対策
離職防止策を考える際には、「どのような層が」「どのような原因で」離職しているのかを分析することが重要です。
ここからは3つのケースの原因と対策について解説致します。
【早期離職】原因と対策
早期離職が多い原因としては、 “採用のミスマッチ”が考えられます。
採用のミスマッチが起こる一番単純な理由には、「自社のことをきちんと伝えていない」ということがあげられます。
仕事内容、評価制度、有給の消化率、実際の平均業務時間…などを入社前にしっかりと伝えていたでしょうか?
これを怠ると、離職の原因につながります。
この場合は、採用基準の策定からやり直す必要があります。
【中堅層の離職】原因と対策
中堅層の離職が多い場合、「この先のキャリアアップが見えない」と感じている可能性があります。
10年経っても役職も上がらず、給料もたいして変わらず。いっそ転職でもしようかな…というパターンです。
この場合は、事業の成長戦略を描いて社員と共有したり、人事制度を改革する必要があります。
【特定の部署だけ離職】原因と対策
ある特定の部署だけ離職が多い原因としては、その部署内に問題が潜んでいると考えられます。
このような状況が発生する場合は、今一度全体業務を見直し、特定の部署にだけシワ寄せがいき負担が過度になっていないか調査をする必要があります。
また、管理職のマネジメントスキルに問題があるかもしれませんので、スキルアップが望めないのであれば、その管理職ごと変更することをおすすめします。
社内ヒアリングや匿名社内アンケートなど有効な手段を使って、まずは「今、組織で何が起こっているか」を把握することが、離職が少ない組織づくりの第一歩ではないでしょうか。
離職防止に絶対欠かせないものは?
人材の定着には、社員の教育や、採用と教育の権限を一本化させることが欠かせません。
社員の教育
採用は「人材獲得競争」ですから、よい人材が低待遇でホイホイ来てくれるわけではありません。
現場社員
例えば、現場の人間がこのような希望をしても、人事側では給与水準が合わずに「70点の人材を採用するので精一杯」というケースもあります。
大事なのは、70点の人材を100点に育て上げる人材育成力です。
しかし、人材育成に対する意識やスキルが低く、その必要性に気付かずにいる企業がとても多くいます。
現場社員
このように、採用だけの問題にしてしまっていることも多いです。
そういった意識のズレから組織内の分裂が始まり、離職が止まらなくなるという事態にもなりかねません。
人材育成スキルが低く、離職率が高まってしまうと、退職した社員などから会社の悪評が立ってしまうリスクもあります。
それがさらに採用を難しくしてしまうこともありますから、会社は、人材育成には慎重にならなければなりません。
優秀な人材の定着のためには、社員の教育は絶対に欠かせません。
採用と育成の権限を一本化させる
例えば、「採用は社長が行う」「事業推進と育成は現場が責任を負う」といった場合。
社長
現場社員
役割分担していると、このような構造に陥りやすいのです。
ここを改善して人材を定着させるには、利益責任を持つ事業部長に「採用と育成」両方の権限を与えることが望ましいでしょう。
結局、責任者を複数置いてしまうと、「採用が悪い」「育成が悪い」「事業戦略が悪い」などと、責任のなすりつけあいになるわけです。
したがって、要となる一人の責任者を置いて進めていくことをお勧めします。
責任者
「100点の人材はほとんど採用できないから、現実的に70点くらいの人材を狙っていこう」
「70点から育て上げないと事業を成長させられないんだ」
責任者に任命された方は、このように現実的な面を統合的に見ていきながら、責任を持って人材採用と育成の監督を進めてください。
一貫した人材育成体制が整えば、社員も会社の目的等を理解しながら仕事に邁進することができるはずです。
ケース別の離職防止策と欠かせないもの
ケース別の離職防止策と、離職防止に欠かせないものについて解説いたしました。
- 離職率20%以下→特に気にすることはなく、正常な組織状態
- 離職率50%以上→早急に原因を分析する必要ありな組織状態
- 早期離職が多い→採用のミスマッチ。採用基準策定からやり直す。
- 中堅層の離職が多い→成長戦略の共有と、人事制度の見直しをする。
- 特定の部署だけ離職が多い→管理職のスキルアップ、もしくは変更する。
- 社員の教育
- 採用と育成の権限を一本化させる
今回お伝えしたポイントを取り入れて、離職率の低下と人材定着の改善の一助になれば幸いです。
「取り組んでみても効果が得られなかった」とお悩みの方は、現場の声を吸い上げる取り組みや、採用基準の策定などもイチからサポート致しますので、ぜひ一度お問い合わせください。