採用計画というのは、事業の成功や経営そのものに関わるほど重要であり、本来なら経営者が陣頭指揮を執って策定を行うべきものです。
しかし、忙しさのあまり「採用計画を全て人事部に任せている」という経営者もいらっしゃるのではないでしょうか?
仮にこの状態で採用がうまくいっても、「なにが良くて成功したのかがわからない」という状態に陥ります。これでは、いつまで経っても自社の採用力は伸びないままです。
そこで今回は、普段忙しい経営者のために、採用計画の策定方法をご紹介致します。8つの手順に沿って作成するだけで、大まかな採用計画を策定することができます。
また、記事の後半では、採用計画策定のためのテンプレートを2つご用意しております。似たようなケースをお考えの方はぜひご活用ください。
採用計画の成功には「3つの計画」が必要不可欠
手順1.自社のビジョン(経営理念)を確認し、強みや実績を整理する
まずは自社のビジョンを確認して整理します。
「その事業のやりがい・喜びは?」
また、ビジョンを整理する際は、自社の独自性や優位性についても必ず確認しましょう。
手順2.採用広告で打ち出すべきポイントを決める
ビジョンを確認したら、採用広告で打ち出すべきポイントを決めていきます。
・こんな風に顧客から喜ばれています
・それを一緒にやりたい仲間を募集しています
自社のビジョンや強みを基に、訴求ポイントを整理します。
手順3.自社の行動指針(バリュー)を整理する
行動指針は、「こういった価値観、行動指針を大切にする仲間と一緒に働きたい」ということを明確にするものです。ここで重要なのが、「行動指針を評価制度や採用要件に反映させる」ということです。
「入社してみたら別の観点で評価されてしまった。話が違うじゃないか」
せっかく行動指針に沿って人材を採用しても、このような事態に陥り、あっさりと離職してしまう可能性があります。もしも、評価制度や採用要件と整合性が取れていない行動指針であれば、まずは行動指針そのものを整理しましょう。
・私たちは、アクセルを踏んでスピードを出すことと、ブレーキを踏んでじっくり進むことのバランスを大切にしています。
・私たちは、挑戦したときにこそ現れる困難な壁を乗り越える方法を自分たちで開発していくことを大切にしています。
手順4.人材要件(資質)を決める
人材要件(定性的な資質面)は、自社のバリューから導き出されます。評価制度が整っている場合、それをそのまま人材要件として活用しても良いでしょう。
・スピードと丁寧さを両立できる人材
・壁にぶつかった時、自ら解決方法を考える地頭のある人材
手順5.事業計画を作る
事業計画は「◯年に◯領域で売上◯円、組織体制としては◯名体制で総人件費は◯円」といったものです。
この事業計画を基に、要員計画を作っていきます。
手順6.要員計画を明確にする
上記の事業計画に沿って要員計画を作ります。例えば、「1年以内に営業部長(年収500~600万円)クラスが1名、営業部員(年収300~400万円)クラスが3名必要となる」といったことを明確にします。
管理職(年俸700万円レンジ):10名
一般職(年俸400万円レンジ):40名
管理職(年俸800万円レンジ):5名
一般職(年俸400万円レンジ):40名
手順7.採用チャネルを決める
採用チャネルの選別で重要なのは、「どのような人材を採用したいのか?」という基本に立ち返ることです。
ビジョンに共感する人材なのか、スキルや経験のある人材なのか。前述の4項目で決めた人材要項を基に、「自社の求める人材がどのチャネルに最もいるのか」を検討します。
採用チャネルは、マイナビやリクナビなどの大手採用代理店や、地域密着型の地元メディアなど様々です。複数のチャネルを併用することも視野に入れながら、欲しい人材要件に沿った適切な採用チャンネルを選びましょう。
中途採用:人材紹介会社A社B社を使う
手順8.選考プロセスを検討・整理する
「4.人材要件」「6.要員計画」で明確になった資質やスキルを、どのような選考プロセスで見抜くのかを検討し、整理します。
定性的な資質面については、基本的に面接で確認することになります。
面接を行う前には、「どのような質問をすると本質的な資質をあぶり出せるか?」を必ず検討しておきましょう。
また、過去の採用データをまとめておくことも重要です。
「面接時の評価も高く、入社後の評価も高い」
こういったケースを調べることで、「面接でどのような回答をした人材が、入社後の評価が高いのか」ということがわかります。
ストレス耐性は筆記テスト(専門業者の取り扱っているもの)を導入し、スキルについては、面接ではなく実技試験を活用するとよいでしょう。
一次面接、二次面接において「過去に挑戦したことは?」を問う。「本当に本人が挑戦したことか?」「挑戦者ならではの苦労話が詳細にあったか?」などで判断する。
【課題を解決する地頭を見極める場合】
ケース問題の筆記試験を行う。過去に自社で起きた問題を解かせる。
【簡易版】採用計画のテンプレートをご紹介
採用計画の策定方法を8つの手順に沿って解説致しました。しかし、手順がわかっても実際に作るとなると難しいものです。
なのでここからは、10年以上で300社を超える企業の採用支援をさせていただいた経験から、比較的多かった2つのケースに絞って「採用計画のテンプレート」をご紹介します。
「採用計画を立てるのが難しくて悩んでいる」
「今回の事例と同じようなケースの採用計画を立てる予定だ」
前述した8つの手順と合わせてご覧いただくことで、より具体的な採用計画のイメージが浮かびやすくなるかと思いますので、ぜひご活用ください。
「新卒・中途合わせて150名採用する」という採用計画/A社の例
まずは「新卒・中途合わせて150名の採用を行う」というA社を想定して作成したテンプレートをご紹介します。
こちらのテンプレートに記載されている数字に関しては調整が必要ですが、「採用スケジュール」や「人材要項」については、そのままの使える内容かと思います。
基本方針
2021年度中に150名を増員する。
方針詳細
管理職(年俸700万円レンジ):10名
一般職(年俸400万円レンジ):40名
管理職(年俸900万円レンジ):5名
一般職(年俸500万円レンジ):40名
管理職(年俸800万円レンジ):5名
一般職(年俸400万円レンジ):40名
人事管理職:1名
人事一般職:4名
経理管理職:1名
経営企画職:4名
採用チャネル
一般職120名のうち、60名以上は新卒採用とし、不足分を中途採用で補う。
管理職等30名は中途採用とする。
採用代理店A社、B社、C社のチャネルを採用する。
既存社員紹介、エージェントX社、Y社のチャネルを採用する。
採用スケジュール
新卒採用は以下のスケジュールとする。
中途採用は「随時募集」とし、面接官は人事より指定する。その際に、月2回以上の採用面接業務が発生することを事前周知する。
また、5月は新卒採用の面接業務があるため、中途採用のプロセスは一時休止とする。
人材要件
【新卒人材の人材要件】
・主体性が高いこと
・協調性が高いこと
・論理性が高いこと
※営業職/コンサルタント職/エンジニア職への配属は、入社後のトレーニング後に通達する。
※配属先職種別採用は行わない。
【中途採用の人材要件】
一般職は過去の経験を問わない。人材要件は新卒採用に準じる。
管理職は以下を要件とする。
・当社の事業内容を理解し、事業への熱意を持っていること
・ビジョン構築力が高いこと
・事業推進力が高いこと
・部下指導力が高いこと
※なお、各人材要件の能力についての詳細定義、及び、面接の際にどのような観点から評価するかについては、別途面接マニュアルに規定する。
新卒採用における採用計画の立て方│4ステップで解説選考プロセス
筆記試験
一次面接:一般社員が担当
二次面接:管理職が担当
三次面接:役員が担当
※面接官の職種は問わない。
一次面接:管理職が担当
二次面接:役員が担当
※配属予定部署の者が面接官を担当する。
「新卒を4名採用する」という採用計画/B社の例
次に「新卒採用を4名行う」というテンプレートをご紹介します。
こちらは比較的に中小企業で多いケースかと思います。こちらも数字に関しては調整が必要となりますが、「採用スケジュール」や「選考プロセス」に関してはそのまま使える内容となっております。
【求める人物像の作り方】中小企業が考えるべきことは?採用スケジュール
10回の面接後、通過15名を面接官会議で決定
15回の面接後、通過8名を面接官会議で決定
採用チャネル
2023年4月入社はマイナビを利用する。
選考プロセス
前年度の内定後辞退率が高かった(50%)という反省を生かし、内定辞退を生じさせない選考プロセスを徹底する。
人事担当者→メールへのレスポンスは即時、必ず応援コメントを添える。
面接官→自社の魅力を伝える、応募者の就活全般へのアドバイスを行う。
人事担当者→説明会参加日程、面接日程等の調整依頼がなかったか等の確認。
面接官→志望業界、志望理由のヒアリング。他社選考状況のヒアリング。
人材要件
自社の社風に合っていて、定着かつ活躍できる人材。
・「売り物」ではなく「売り方」の工夫を楽しめる人材
・給与水準よりもWLB(ワークライフバランス)を重視している
・裁量(責任)があることを楽しめる人材
・データや経験を論理的に分析することが好きな人材
・一匹狼でなくチームで仕事をすることが好きな人材
さいごに
採用計画の策定方法と2つのテンプレートをご紹介致しました。
今回の策定方法を活用することで、自社のミッションやバリューについて改めて考えることができます。基盤がしっかりとした採用計画は、自社の採用力向上に繋がり、優秀な人材と出会うチャンスを生み出します。
また、当たり前の話となりますが、計画を立てる以上に行動することが重要です。実際に採用活動を行うことで生じた課題に対して、どのようにPDCAを回していくか。それによって、自社に適した採用計画が見えてきます。
なので、例えば「これから新卒採用を初めて行う」という方は、まずはテンプレートの丸写しでもいいので、採用計画を立てて実際に動かしてみてください。
お困りの際にはオンラインでも無料で相談を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。