会社の規模や業種に関わらず、中途採用で得られる優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいもの。
即戦力としてはもちろん、教育コストの削減や社外の知識・経験など、あなたの会社にもたらす影響は計り知れません。しかし、ここで忘れないでいただきたいのが、その人材を生かすも殺すも会社次第ということです。
そこで今回の記事では、中途採用におけるメリットや採用計画の考え方について解説致します。
中途採用におけるメリット
中途採用には即戦力以外にも様々なメリットがありますが、ここではそのうちの3つについて解説致します。
- “本当の自己分析”を経た人材が採用できる
- ビジョン採用が教育コストの削減につながる
- 中途採用で自社に多様性をもたらす
“本当の自己分析”を経た人材が採用できる
学生の多くは、なんとなくの知名度で企業選ぶ「大企業志向」です。しかし、実際に働くことで、次第に「譲れない価値観」というものに気付きはじめます。
自分が何に喜びを感じ、何にストレスを感じるのか?
就活ではなかなか気付くことができない、こういった価値観に気付くことが、本当の自己分析と言えます。新卒として入社した後の一定期間は、見方を変えれば「社会全体としての壮大なインターンシップ」とも言えます。
こうした本当の自己分析を経た人材を採用することは、会社にとって大きなメリットとなります。
自らが大事にする価値観を求めて転職する人材は一定数以上います。そして、この人材母集団のなかにはとても優秀な人材が多くいます。
これは、規模感や知名度では太刀打ちできなかった中小企業にとっては絶好のチャンスであり、ここで重要になってくるのが、その中小企業の”実力”です。
ビジョン、戦略、社風、人事制度…こういった自社の魅力を存分に訴求していくことが、優秀な人材の確保に繋がります。
ビジョン採用が教育コストの削減につながる
中途採用は通常、ポジションを限定して採用するのが一般的です。ただし、中途採用でも新卒採用と同じく、入社後に配属先を伝えるという手もあります。
さらに言えば、自社の掲げるビジョンに共感する人材を採用する「ビジョン採用」をしてもいいのです。ビジョンに共感する人材は、その実現に向けて自発的に学習し、挑戦し、経験を経て成長します。そして、それはやがて成果を生み出します。
これはつまり、ビジョン採用をすることで「自助努力する力の高さ(成長スピードの早さ)」を持った人材を獲得できるということです。
自社のビジョンやバリュー(フィロソフィー)に共感する中途人材を採用することは、自社を強化するうえで効果的な方法の一つと言えるでしょう
また、成長スピードの早い人材の獲得は、採用コストの削減につながります。
新卒の場合、3ヶ月ほど教育してから取引先に向かわせるケースも多く、「現場の教育負担が大きすぎる」「活躍してもらえる時期が遅すぎる」といった課題は無視できません。
もちろん、中途採用でも教育に費やす時間は最低限必要ですが、ビジョンに心から共感している人材であれば、入社後からでも自発的に必要なスキルや知識を自発的に学び取っていくため成長スピードが早く、新卒採用に比べて採用コストを大幅に削減できると言えるでしょう。
中途採用は自社に多様性をもたらす
中途採用の大きな価値の一つは、自社に多様性を取り込めるということです。同じメンツでずっと仕事をしていると、良くも悪くも考え方や仕事の進め方などが均一化してきます。
新卒採用の場合、新しい人材が入社してきても「就職した会社の価値観を覚える」という態度で入社してくることが多いため、多様性を高める効果は少ないところがあります。
一方で、中途採用の場合は、採用した人材に経験もありますし、前職ならではのスキルなどもあったりします。人事制度などの内部システムについても、他社の経験があります。
「そんなやり方があったんだ」
「うちのやり方は非効率だったじゃないか」
「どんどん新しいことを学んでいかないといけないな」
このような気付きは、中途採用によって起こることも多いのです。そして、今まで自社になかった「新しい風」を吹かせてくれるというのは、会社にとって思った以上に価値があります。
こういった価値を最大化するためには、中途採用人材への接し方が重要となってきます。自社のやり方に染め上げるのではなく、前職での経験をもとにした意見を積極的に聞くような接し方がおすすめです。
働くなかで今までとの違いを感じたら、良い点も悪い点も共有してもらいましょう。良い点は社員の自信に繋がり、悪い点は反省のきっかけになります。
もちろん、悪い点を共有されたからといって、全てその中途採用社員の言うとおりにする必要はありません。ただ、提示された違和感に対しては、「こういう理由でこのやり方をやっている」としっかり説明すると良いと思います。
もしその説明ができず「とにかくこれがうちの昔からのやり方だ」となるのであれば、それは何が本当にベストなのかよく吟味して議論をすることが、より社内の知見を深めていきます。このプロセスは、組織にとって大きな財産になるでしょう。
中途採用における採用計画の考え方
中途採用には、「いま必要な人材を雇う」「いま自社にとって弱い部分を補強する」という側面が強くあります。例えるならば、プロ野球の助っ人外国人選手のような感覚と言えるでしょう。
しかし、中途採用はプロ野球の世界のように「要らなくなったら即クビ」というわけにはいきません。即戦力採用ではありますが、期間限定採用ではないのです。であるならば、新卒採用と同様に「就職よりも就社」ということを大切にすべきなのです。
就社(会社のビジョンや社風で勤め先を選ぶ)
中途採用の採用計画を立案する際には、「業務委託のように外注を活用するか」「あくまでも社員として採用するのか」と、どちらの方が自社にとって良いのかをしっかり考える必要があります。
例えば、A部署のA事業をやってもらうつもりで雇ったけれども、そのA事業は上手くいかず撤退。このような場合でも「〇〇さんを同時に解雇」というわけにいかないわけです。そうすると、〇〇さんには自社のB事業やC事業に取り組んでもらうとか、XやYという職種をやってもらうことも起こりえるわけです。
Aさん
Bさん
人材によって様々なケースが出てくるでしょう。中途採用では、「その事業がうまくいかなかった時に人員はどうするか」など、様々な状況を見越して計画を立案することが重要となります。
繰り返しになりますが、中途採用の計画を立てる場合には、まず「本当に社員として雇用が必要か?外注ではだめか?」ということを検討しましょう。
そのうえで「こういった領域に経験のある社員を中途採用する」と決めた場合には、さらに計画を具体的にしていき、ビジョンや理念とのすり合わせを行っていきます。
中途採用での面接における注意点
最後に、中途採用での面接時の注意点についてお話します。
転職をする人間というのは、少なくとも一社以上経験しているので、「会社を選ぶ評価軸」がそれぞれ備わっています。
そこで大切なのは、選考プロセスで会社側が真摯に自己開示することです。
「給与面に不満はなかったが、のんびりすぎる社風が合わなかった」
「もっとガツガツやっていくような会社で働きたいと思って面接に来た」
このような考えを持って面接に来た人材には、正直に自社の実情を開示しましょう。たとえ隠して選考を進めてうまく入社してもらったとしても、すぐ現状に気付き辞めていきます。このような事態は、お互いに時間の無駄としか言いようがありません。
中途採用の時ほど自社の情報をしっかりと開示し、win-winの採用・転職となるように厳しく選別し合う。このような意識が人材の定着に結びつき、中途採用のメリットをしっかりと得ることにつながります。