採用に関して、このように頭を悩ませている経営者や人事の方もいらっしゃると思います。
しかしこれは、人材に問題があるというよりも、採用課題がうまく見つけられていない可能性があります。
そこで今回は、採用における考え方と採用課題の見つけ方について解説致します。
採用課題を見つける前に
これまでの経験上、企業の人材採用の失敗は、採用戦略(採用数値目標)だけを考えて事業戦略を疎かにしていることに原因があると感じています。
なので、採用について考える前に、事業戦略について考えなければなりません。
事業戦略として考えていきたいのが、求める人材に対する雇用目的です。
既存事業の即戦力として活躍してほしいのか。
それとも、中長期的に見て自社の経営人材として育ってほしいのか。
目的が違えば採用ターゲットとなる人材も当然変わってきます。
この点をしっかりと考えた上で採用戦略を練らなければ、せっかく人材を採用できたとしても、その力を最大限に活かすことは難しくなります。
プロ野球のドラフトで例えるならば、昨年投手力の不足に泣いた2位チームであれば、「即戦力となる投手」を採りたいと考えます。
野手については、充実していてレギュラーの年齢も高くないとなれば、「高卒の大器を感じさせる野手」を優先的に採る、といったことを考えます。
こういった事例を自分の会社に置き換えて考えてみるのもおすすめです。
実際には、これらのポートフォリオを考えながら、新卒採用、中途採用、職種などを最適なバランスで採用を考えていきます。
採用課題を見つけるためチェックリスト
採用における“成功”とは、採用した人材が、入社後も活躍を続けて自社に貢献することです。
「採用できた」ということ自体がゴールになるわけではありません。
それを踏まえたうえで、5つのチェックリストをもとに採用課題の見つけ方について解説していきます。
- 「入社前後の評価」と「採用経路のデータ」を持っているか?
- データ分析結果を社内展開できているか?
- 辞退者の評価はどうだったか?
- 効率的に母集団を集められているか?
- 母集団の質は高いか?
①「入社前後の評価」と「採用経路のデータ」を持っているか?
ここで重要なのは、入社後に活躍している人材が「どのような採用経路だったのか」ということです。
そこを把握していなければ、採用プロセスを見直すこともできません。
「A部長が面接で通した人材は入社後も活躍している」
「あのエージェントの紹介で入社した人材は在籍年数が短い」
このようなデータを集める必要があります。
②データ分析結果を社内展開できているか?
この「入社前後の評価」と「採用経路のデータ」を分析することで、傾向を見ることができます。
例えば、「A部長の面接評価が高かった人材は、入社後も活躍しているケースが多い」という傾向が見えてきたとします。
A部長は何を見ているのか。他の部長と何が違うのか。
そういったことを社内ノウハウとして抽出し、他の面接官へも展開していく必要があります。
ここまでは「集まった人材の中から、優秀な人材を見抜くことができているか」のチェックリストになります。
③辞退者の評価はどうだったか?
ここからは、「優秀な人材から辞退されていないか」という観点で見ていきます。
もしも、辞退者の中に、技能試験や面接試験の評価が高い人材が多かったとしたら「優秀な人材に逃げられている」ということになります。
面接官の口説く力が弱かったのか?
年収やポジションでの待遇面が他社よりも悪かったのか?
いずれにせよ、分析して対策する必要があります。
④そもそも母集団を集められているか?
もちろん大量の採用広告に予算を投下すれば、母集団を集めることができるでしょう。
「応募者獲得予算」といった指標を見て、それを下げられるように広告効率を高めていく必要があります。
この指標が低いようだったら、自社での広報活動に改善の余地があると言えるでしょう。
⑤母集団の質は高いか?
仮に「応募者獲得予算」が低くて優秀な数値だったとします。
しかしそれが、「応募者には交通費を支給します」という施策によって数値がよくなっているだけで、実際には自社への志望度が高くない人材を多く集めてしまっている、となっていては意味がありません。
応募者の質は、面接をすれば分かります。
面接の評価が高かった人材は「応募者として質が高かった」ということになります。
たとえば面接評価が、A評価1人、B評価2人、C評価7人の、合計10人から応募を得られていたとします。
一方で「A評価2人、C評価1人」の3人しか応募を得られていない、というケースもあります。
「10人も母集団を作れた」という意味では前者の方が成功ですが、A評価の人材を2倍集められたという意味では、後者の方が成功だということになります。
ここでも「面接の評価」のデータをしっかりとっておいて、母集団のリストと突き合わせる というデータ活用が重要になります。
事業戦略と採用戦略の連携で、採用のミスマッチをなくす
採用戦略を立てる上で注意すべき点があります。
それは、会社の規模が大きくなると、経営部門と人事部門の考え方に“ズレ”が出やすくなり、それがミスマッチな採用につながってしまうことです。
最悪なケースは、経営層と人事部側の連携がとれていない時に起こります。
経営層
人事部
あくまでも例の一つですが、このようなケースはよく見かけます。
採用目的に“ズレ”が生じていると、いくら良い人材を雇っても、人材は育ちにくく会社経営にも大きな影響が出かねません。
事業戦略と採用戦略を高いレベルで検討している会社は、特に長期の事業戦略をしっかりと考えています。
たとえば、「国内マーケットだけでは頭打ちになるのは見えていて、5年後10年後は海外マーケットの規模を拡大したい」といった事業戦略がある場合。
「10年後に十分に海外事業を展開できているように、現地採用を今から少しずつ行っていきたい」といったことを早め早めに考え、手を打っていきます。
もちろん、採用は最大の投資ですからリスクはありますが、経営の将来的な見通しを立てた上での採用戦略もまた、考え方としては重要です。
このように、事業戦略と採用戦略がしっかりと連携していれば、新卒の採用要件や採用時の書類選考・面接での質問などにも自然に反映されていくはずです。
採用戦略の基本は、これらの事業戦略の要素が選考プロセス(書類選考時の記述項目や面接時の質問内容)の中にきっちりと組み込まれていなければなりません。
また、事業戦略に変更が生じれば選考プロセスにも変更が反映される、というように連携していなければならないのです。
まず、現場の短期的な人材ニーズと経営の長期的な事業戦略を考慮し、これらに沿った採用する人材要件やポートフォリオを組むことです。
そして、それに沿った採用が実行されていくことが、人材採用の王道と言えるでしょう。
採用課題解決のポイント
採用における考え方と採用課題の見つけ方について解説致しました。
- 「入社前後の評価」と「採用経路のデータ」を持っているか?
- データ分析結果を社内展開できているか?
- 辞退者の評価はどうだったか?
- 効率的に母集団を集められているか?
- 母集団の質は高いか?
- 採用について考える前に、事業戦略について考える
- 目的が違えば採用ターゲットとなる人材も当然変わる
- 経営と人事の間に生まれる“ズレ”が、採用のミスマッチにつながる
- リスクはあるが、経営の将来的な見通しを立てた上での採用戦略も重要
採用課題がわからずに失敗してきたと感じる企業様は、ぜひ今回ご紹介したチェックリストや考え方を参考にしてみてください。
そのうえで採用戦略についてお悩みであれば、オンラインによる無料相談も受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。