「欲しい人材の選考が進んでいたが、あと一歩のところで辞退されてしまった」
人事や採用担当者の方なら、誰もがこの辛い経験をしたことがあるはずです。
せっかく優秀な人材に巡り会えたこともそうですが、それまでに積み重ねてきた期待や過程が一瞬で崩れ去るのは、肉体的にも精神的にもつらいものがあります。
ただこれは、もしかすると「欲しい人材を口説く力」が足りなかったせいかもしれません。口説く力を上げることで、自社を選んでもらう確率を上げることができます。
そこで今回は、中途採用・新卒採用で使える「欲しい人材の口説き方」について、具体的な事例を交えながら解説していきます。
中途採用で使える、欲しい人材の口説き方
採用活動には、「優秀な人材を選別する」「優秀な人材を口説き落とす」という2つの面があります。
そして、欲しい人材を口説くためには、「その人材にとって何が口説きポイントになるのか」ということを抑えておく必要があります。
報酬面で交渉する
給与面に納得できずに転職する人材は多くいます。
なので、中途採用であれば「報酬面で交渉する」ということはもちろんあり得ます。
「年収500万円という話で進めていたけれど、高く評価しているので年収600万円で来てほしい」
このように伝えることは、強い訴求力のひとつになります。
直属の上司が口説きに行く
配属先の責任者が直々に「どうしてもうちに来てほしい」と伝えることは、大きな訴求力になるでしょう。
プロ野球の世界などでも、FA選手の交渉の場に「監督が直接出向く」ということが決め手となり入団先が決まる…といったこともあります。
こういったケースで重要なのは、単に役職上位者が出てくることではなく、入社後に働く直属の上司が出てくることです。
一緒に働く直属の上司が社長であれば、社長が口説きに行く。日々の業務の中では部長が接するのであれば、部長が口説きに行くと良いでしょう。
「直属の上司との関係性」というのは、働くうえで大きな影響があるものです。
直属の上司
今後一緒に働く直属の上司から、このような言葉をかけられたとしたら、人材側も「これならポジティブに働いていけそうだ」という思いを強く持てるようになります。
人材に合わせて効果的な口説き文句を使う
採用とは逆に「離職を慰留したケース」となりますが、とても印象に残っている話があります。
とある知人の話で、「新しいことに取り組んでいきたいが、この会社では難しい」という悩みを抱えていることを上司に相談しました。
すると上司から、「うちの会社にいれば安泰だぞ。企業年金もしっかりしている」と言われ、引き留めようとしたその言葉を聞いて、会社を辞めることを決意したそうです。
口説く場合にも同じことが言えます。
例えば、「家族と過ごす時間を大切にするために休暇もしっかり取りたい」という優秀な人材(子育て世代)がいたとします。
そのような場合には、
- 「忙しくなる時期もあると思うが、年間の有給は100%消化できるように最善を尽くす」
- 「毎年、期首に有給取得計画を出してもらうようにするから」
などといった言葉が、強い口説き文句になるわけです。
違うパターンとしては、
- 「採用直後はマネジャー職ではないけれど、来期にはマネジャーになってもらうつもりで採用する。そのつもりで、1年目から部下のマネジメントや指導もしっかりと頑張ってほしい」
などと伝えることが訴求になることもあります。
このような「効果的な口説き文句」を言えるようにするためには、その人材の嗜好性やニーズを把握していなければなりません。
そういう意味では、面接が「その人材のニーズをヒアリングする場」であることも忘れないようにしましょう。
新卒採用で使える、欲しい人材の口説き方
新卒採用の場合、中途採用よりも候補者たちとの接点に多様性があるため、あらゆる接点が「口説く」チャンスになります。
採用プロセスの始めから意識する
新卒採用の場合、「欲しい人材を絞り込んでから対策をするのでは遅い」ということが特徴として挙げられます。
口説く、つまり候補者たちの志望度を高めるためには、全面的に採用プロセスの始めから意識して取り組むことが重要です。
- 採用専用サイト(もしくはページ)
- 社員の紹介
これらはもはや標準装備であり、こういった準備がない時点で、学生からは「ネット対応ができていないのか」「採用にやる気がないのか」という印象を持たれることになります。
採用担当者のリプライを早くする
次に重要なのは、採用担当者のリプライの早さです。
例えば、リクナビやマイナビ経由で学生から連絡が来て、2日後に返事をしたとします。
学生にとっては、これだけで「採用にやる気がないのだな」と判断されてしまいます。
私が採用のご支援をさせていただく場合、この「リプライの早さ」に関しては担当者さんに強くお願いするようにしています。
また、リプライの質も大事です。
ある支援先では、学生とのやり取りにおいて「ESを読んだ感想を一言添える」などの努力をしていました。
こういった、顧客接点ならぬ“学生接点”一つ一つの質を高めて、プロセス全体で「口説く」ことが重要です。
ですからもちろん、面接官が横柄な態度ではいけません。「相互に選別し合っている」という意識をもって臨むようにトレーニングをする必要があります。
必要なら、親も口説く
どうしても欲しい人材がいる場合には、相応の労力をかけることもあるでしょう。
とある優秀な学生で、「ベンチャー企業ということで親が不安に思っている」というケースがありました。
この学生を採用するために、社長が学生の実家にアポイントを取りました。親の不安を取り除くために自社の将来性を説明し、その学生のどんなところを評価しているのかまで説明に行ったのです。
欲しい人材の口説き方まとめ
中途採用・新卒採用で使える「欲しい人材の口説き方」について、具体的な事例を交えながら解説してきました。
ポイントを整理しておきます。
- 報酬面で交渉する
- 直属の上司が口説きに行くことで、人材側も希望が持てる
- その人材の嗜好性やニーズを把握し、効果的な口説き文句を使う
- 志望度を高めるためには、採用プロセスの始めが肝心
- とにかく採用担当者のリプライを早くする
- 必要なら親も口説く
終盤でご紹介した、社長が親を口説きに言ったエピソードは、人から見れば「そこまでするのか」と思われるかもしれません。
しかし、人材の質が競争力に直結するようなビジネスにおいては、優秀な人材を獲得する以上に重要な経営マターはありません。
今回の記事で紹介した人材の口説き方を実践していただき、優秀な人材の獲得の一助となれば幸いです。
実践したうえで、「欲しい人材を口説けない」とお悩みの方は、オンラインによる無料相談を受け付けておりますので、是非お気軽にご相談ください。